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大井町コミュニティキャンパスプロジェクトは、6月11日(木)20時から、初のオンライン研究発表会を開催しました。テーマは『45歳からの起業の選択とプロセス~新スキル習得型の起業に着目して』、発表者は慶應義塾大学SFC研究所上席所員の河野純子です。

45歳以降で全く未経験の分野での起業を実現した元会社員9人へのライフストーリーインタビューで明らかになった起業プロセスを発表。40代・50代の会社員を中心とする30名の参加者が耳を傾けました。研究発表のあとには、参加者同士で意見交換・ネットワーキングができる懇親会を開催。活発な意見交換が行われました。

以下、そのサマリーと参加者アンケートの結果を紹介します。なおこの研究発表をキックオフに、「45歳からの起業研究会」を発足させ、今後も継続的にオンライン研究会を開催していきます。ぜひご注目ください。

 

<開催概要>

20:00 「大井町コミュニティキャンパスプロジェクト」の紹介

宮垣元教授慶應義塾大学総合政策学部 宮垣元教授

「慶應義塾大学SFC研究所は、外部の方と連携しながら様々なラボを運営しています。みらいのまちをつくる・ラボもそのひとつで、その中でコミュニティに関する研究をしているのがこの『大井町コミュニティキャンパスプロジェクト』です。本日は初のオンライン開催の研究会ですが、みなさんと問題意識を共有し、経験や考えをシェアしていただきながら、ともに学びあう場にしていけたらと思います」

21:05 「45歳からの起業の選択とプロセス」研究発表

河野純子慶應義塾大学SFC研究所上席所員 河野純子

(1)研究の目的

本研究の目的は、中高年会社員のセカンドキャリアとしての「起業」の可能性を検討することです。長寿化が進む中、定年のない働き方として「起業」は魅力がありますが、長年、会社にキャリア形成を依存してきた中高年会社員が、どうすれば「起業」という自律的な働き方に転換できるのか。その動機とプロセスを明らかにし、必要な支援策を考察しました。

なお、「新スキル習得型」の起業に着目する理由は、以下の通りです。

(2)調査手法

中高年の起業を「人生の転機」ととらえ、新スキル習得型の起業を実現した起業家に対するライフストーリーインタビューを実施しました。調査対象者は、年代・業種のバラエティを考慮した以下の9名となりました。

(3)調査結果と考察

9名のインタビューデータをもとに、M-GTA分析を行った結果、「中高年会社員の起業プロセス」として、以下の5つのプロセス、12のカテゴリー、39の概念が明らかになりました。

ここで得られた知見は、以下のとおりです。
①中高年会社員の起業プロセスは「会社員人生との決別」からスタートする。その背景には「人生の長さ」と「会社員の限界」へのリアリティ、そして「自律的キャリア意識の醸成」があった。

②起業の動機は、「自分が主人公の人生を生きたい」というものであった。起業テーマの探究プロセスには困難さがあるが、実現後の満足度は高く、それが生涯現役で働く意欲につながっていく。

③「学ぶ」というプロセスには多面的な機能がある。学ぶことでゼネラリストタイプの会社員も起業を実現できる。

なお、調査対象者が実施した「学び」は以下のとおりです。多くの人が在職中からしっかりと学んでいたことがわかります。

また起業テーマ探索から学びを経て起業を実現するまでにかかった時間は1年~15年に及び、40代後半からの準備が望まれることがわかります。

(4)起業支援策について

起業プロセスの中で困難なポイントは、「自律的キャリア意識の醸成」と、「起業テーマの探索」でした。そこで「大井町コミュニティキャンパスプロジェクト」でこの2点を乗り越えるためのセミナー・ワークショップを開催しました。その結果、両者を乗り越える上では、40代からの「越境学習」の場が有効であることが示唆されました。以上で研究発表を終了します。ご清聴、ありがとうございました。

20:50 オンライン懇親会

続いてオンライン懇親会を開催。3グループに分かれて、自己紹介や参加動機、研究発表を聞いての気づきのシェアを行っっていただきました。最後の10分は全体会とし、各グループでのディスカッションの報告をして閉会となりました。ご参加ありがとうございました。

<参加者プロフィール>

今回、「大井町コミュニティキャンパスプロジェクト」のFacebook等で開催告知を行った結果、定員いっぱいの30名の申し込みがありました。参加者のプロフィールは以下の通りです。

<参加者アンケートより>

参加者の多くが、研究報告から多くの学びがあったとご回答いただきました。また80%の方が懇親会まで参加され、意見交換の中から刺激や気づきを得たようです。起業支援策についてもさまざまな意見が寄せられ、今後の研究活動のヒントを得ることができました。ご協力、ありがとうございました。

(1)参加状況

研究発表会+懇親会 81%
研究発表会のみ 19%

(2)研究報告を聞いて、最も印象に残ったことはどんなことですか?何か気づきや学びはありましたか?具体的にお聞かせください。

・起業にあたり、未経験の領域に挑戦して生活が満たされている人が多い、という調査結果にとても興味を持ちました。
・起業した方の共通点が身近な人が長寿だったこと。ぼんやりとでも人生の時間を考えてどうやって生きていきたいのかと考えることの大切さに気づいた。
・起業というのは,一部の突出した方ができる特別なことなのでは?と思ってしまうのですが,起業している方は,最初は心のざわつきがあって,そのざわつき・違和感を大切にして,時間を費やしてリサーチして・・・というプロセスをたどることがわかりました。いろいろ乗り越えて自分が主役の人生を見つけられて素敵です。
・定年後の人生について設計しなおす機会となりました。時間の使い方が大変だろうな、とは思っていましたが起業という発想はありませんでした。どうしてもリスクが先に立ちますが、しっかり学べば楽しい人生になるというイメージがもてました。
・9名の方の起業のプロセスをチャートで分析していた部分が分かりやすく、時間をかけて課題を乗り越えて起業したということが印象に残った。9名の方は長寿家系の人が多く「生涯現役」を実践しておられることが素晴らしいと思った。自分も長寿家系であり、この先20年、30年生きるとすれば、何か生き甲斐を持ちたいと思った。
・テーマの模索から起業まで15年かけた方のケースに勇気づけられました。起業のテーマを探るところで学びと行きつ戻りつというのが、今の自分と重なりました。
・何で起業すべきかを考え決めるプロセスが一番困難ですあると聞いて、私自身もそのように感じていたので、みんなそうなんだと少し安心しました。
・100年時代の中で、自身のキャリアと生きがいについて考えていました。起業は考えていなかったのですが、今回のセミナーを受けて、今のキャリアの延長で(今の会社で)、次のステージを考えるのが最も良い選択であることに気がつきました。ありがとうございました。
・最も印象に残ったのは、起業後の満足度が高いということです。学びとしては、起業も適切なプロセスがあり、それを踏むことで確度があがることを知れたことです。
・45歳以上の起業は、社会的な起業や志を持った起業が多いと感じた。

(3)懇親会に参加された方にお伺いします。懇親会での交流は有意義でしたか?何か気づきや学びはありましたか?具体的にお聞かせください。

・それぞれの抱える思いを共有することで、自身の課題の発見になりました。
・有意義でした。時間に限りがあるため、率直な意見交換になり、刺激を受ける時間でした。
・世代に偏りがなく、よかった。短い時間でしたが、ご縁やつながりを感じました。
・普段出会えない方たちと意見交換できてとてもよかった。もっと時間が欲しかった。
・参加の皆さんの悩みや気付きを聞いて発見がありました
・自分の事業計画についてたくさんの経験をされている大人の方々から意見をいただくことができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。
・まだ具体的に起業を検討している方は少ないイメージでしたが、活発な話し合いが行われ意見が聞けたので参加してよかった。他の方の話を聞くことで、自分のことを振り返って考える良い機会になった。
・どのような属性の方が参加されているのか、自己紹介で知ることができて面白かった。参加者の考えや知識を聞くことで勉強になった。
・年齢や背景は様々でしたが、みなさんがとても熱意を持って自分の生き方を考えていることに勇気を得ました。
・有意義でした。特に、実際に起業された方の成功談や失敗談を聞けたのは貴重でした。

(4)中高年会社員の起業支援策として、あなたはどんなことが有益だと思いますか?

・人的ネットワークを再構築する機会
・テーマ探しの支援
・組織人として仕事をしている時間と、次なる学び・準備の時間を作るのはかなりの意識が必要。並走の時間確保・基本知識(特に行政手続きやIT)の支援があるとよいのではないかと感じた。
・会社以外の人へ相談できる体制
・副業可の企業がもっと増えたら、起業したいと思える人にはいいステップになるのではと思った。起業しなかったとしても幅広い視野で物事を見れるようになると思うので企業側にとってもメリットだと思う。
・いきなり起業というとハードルが高いですが,生活をもうちょっと豊かにするため模索中の方が多いと思いますので,いろいろ情報交換していく場があれば有益と思います。
・中高年だからではなく、若いころから会社員はあまり考える機会がないのだと感じるので、副業などを通じた若いころからの越境体験が有益だと思います。
・「やりたいことが何か」を自分の中から削りだして形を持たせる支援が必要と思うのですが、具体策はまだです。夢をまずは夢として豊かに語るところからでしょうか。
・やはり周りに起業家がいる人が少ないですよね。それなので、恰好をつけずに本音を語ってくれる起業家のかた、駆け出しでまだこれからの起業家のかたなど、いろんなロールモデルの起業家とざっくばらんに話せる場があると良いと思います。私も活用したいです!
・質の高いコミュニティ。ロールモデル、メンター。
・今回もとても有益でした。事実を学ぶ機会、先輩や同志と知り合う機会、制度を使いこなす支援、などいかがでしょうか。

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