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2021年1月23日(土)、みらいのまちをつくる・ラボの研究成果を発表する第2回Oimachi Research Form「Withコロナ・Afterコロナ時代のまちづくりを考える」がオンラインで開催されました。ここではセッション5「都市のマイクロバイオーム~人の移動による感染症拡大に着目して」(環境情報学部  鈴木治夫准教授)の要旨をレポートします。新型コロナウィルスの感染症拡大で関心が高まる微生物の実態。その最前線の研究に参加者からは「タイムリーで興味深い内容だった」と多くの反響が寄せられました。
*第2回Oimachi Research Form全体のレポートはこちらをご覧ください。

◆Oimachi Research Formセッション5
都市のマイクロバイオーム~人の移動による感染症拡大に着目して(環境情報学部 鈴木治夫准教授)

(1)微生物とその研究方法
マイクロバイオームとは微生物群集とその遺伝子の総体を指し、ウイルスやバクテリア、カビの研究なども含まれる。肉眼では観察できないため、①顕微鏡で観察する②栄養をあたえて増殖させて調べる③DNA/RNA配列を直接測定する方法がある。③のデジタルデータを分析することで、微生物の進化と伝播経路がわかる。例えば、大腸菌と納豆菌に比べ、ヒトとトウモロコシはより近い。新型コロナウイルスも同様の方法で研究が進んでいる。

(2)薬剤耐性
いま世界的に問題となっているのが、薬の効かない薬剤耐性菌の増加である。背景には、抗生物質の誤った使用がある。2013年には薬剤耐性菌によって世界で年間70万人が亡くなっており、このままでは2050年には年間1000万人が亡くなる。これはガンの死亡者よりも多い。国内でも年間8,000人が亡くなっている。この世界的な広がりは、人の移動が原因である。

(3)人工環境
人工環境とは、病院、駅、公共交通機関など不特定多数の人が集まる場所を指し、そこで微生物の交換が起きることから、2010年以降盛んに研究が行われている。総説としては、人工環境の微生物の多様性を保つことが、病原体の相対量を下げ、感染リスクを軽減することにつながる。そのためにはペットや植物を置く(動物や植物由来の微生物を増やす)、湿度40~60%を保つ、機械ではなく自然換気を行う、太陽光を入れるなどが有効であり、これらの知見は新型コロナウイルス感染対策として活用されている。

(4)国際コンソーシアムMetaSUB
各都市の微生物研究を相互比較できるように研究方式を標準化したのが、私も参加する国際コンソーシアムMetaSUBである。現在、世界60都市から4000サンプルが集まり、60都市に共通する30種類の微生物を発見した。一方で都市間の違いも明らかになっており、例えば検出された薬剤耐性遺伝子はハノイやリオデジャネイロで多く、ストックホルムやサクラメント、ソウル、パリは少ない。また日本には欧米と共通するウイルスが多く、人やモノの移動で運ばれていることがわかる。世界的な人の移動を伴うイベントは興味深く、東京五輪前後でサンプリングを行う計画だったが、現在は逆にヒトの移動が激減したことによる微生物の変化を調べている。今後も大井町を含む日本全国の都市でサンプリングを続けることによって、次なる感染症の対策がとれるようにしていきたい。

◆参加者からの感想・意見
・新たな視点でした。
・withコロナには、必要な知識だと思います。
・都市の微生物の話、コロナウイルスの蔓延する中、とてもタイムリーな話題でした。リオデジャネイロオリンピックの際の研究結果が気になりました。どのような影響がみられたのでしょうか。コロナウイルスの影響で、新しい日常が定着しつつありますが、都市のマイクロバイオームの研究成果が、都市計画の概念に反映される日が近いように思います。
・今後のコロナ対策について気になりますし、抗生物質で処方箋がなくても受け取れたり等知らなかったので、参考になりました。
・大変興味深い内容でした。講演をされた内容は社会の高リスクの課題としてもっと取り上げられてもよいと思いました。
・ガンよりAMRの死者数が多くなると事はいう事は、これから人類はどうなるのでしょうね。病気にはならない体を作らないといけないですね。
・世界規模での調査はすごい。人工的な都市環境の有効性がよく分かった。
・今後のcovit19の解明に、非常に意義のある研究ではないかと認識しました。研究成果の参考となる論文、文献がございましたならご紹介ください。
・大変興味深かった。コロナ感染のある現状において、細菌に関することは今後重要な視点になると思いました。
・全く知らない分野だったので大変興味深かった。

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