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大井町コミュニティキャンパスプロジェクは、7月30日(木)20時から、第2回「多世代シェアハウス研究会」をオンラインで開催しました。テーマは『withコロナ時代のシェアハウスの課題と価値〜信頼関係構築のプロセスに着目して〜』、主催は慶應義塾大学SFC研究所上席所員の福澤涼子です。ゲストに前回に引き続き子どものいるシェアハウス在住者2組を招き、本人たちがコロナ禍の中で感じたシェアハウスの課題や価値を話し合い、シェアハウスに留まらず、暮らし・コミュニティ・育児を考えるきっかけとしました。

「多世代シェアハウス研究会」では、facebookによるグループページを作り、コミュニティとして活動していこうと計画中です。ぜひ、ご注目ください。

<開催概要>

20:00 「大井町コミュニティキャンパスプロジェクト」の紹介

前回同様、まずは、この研究会の位置付けとして大井町コミュニティキャンパスプロジェクトの紹介を行いました。

20:05 シェアハウスについて定義のすり合わせ(担当:福澤涼子)

まず、本勉強会でのシェアハウスの定義を確認し、参加者の認識を統一させました。その定義とは、「リビング、台所、風呂、トイレを協同で利用するShared Housingの形態で、非親族同士が共に住む住居形態」です。

20:10ゲスト紹介

〇東京フルハウスの栗山和也さん・茂原奈央美さんご夫妻


東京フルハウスは東京中野にあるシェアハウス。常に10人弱ほどのメンバーで暮らしておりますが、水回りは一つ。それでも揉める事はなく、なんとなく皆お風呂に入る時間などが決まってきて、それに合わせて生活しているそう。

〇ウェル洋光台の福岡達也さん・梓さんご夫妻


横浜近郊の社員寮を改装して営まれるこちらのウェル洋光台は、30人弱の人が一緒に暮らします。夫婦やパートナー、親子、外国人など多様な人々がともに暮らしているシェアハウスで、コロナ禍では「毎日が日曜日」の様な生活だったそう。

20:20信頼関係とは何か(担当:福澤涼子)

ゲストを含めたディスカッションに入る前に、学術的なことも少し共有しました。今回の主催・福澤から山岸敏男(1999)さんの「信頼」にまつわる考え方を紹介し、この2つのシェアハウスをここに当てはめてみると、ルールのないこの2つのシェアハウスでは、「社会的不確実性」が非常に高い状態となり、信頼関係がなければ、むしろその生活の維持は非常に困難なことが共有されました。

20:50 ゲストとのディスカッション

いよいよゲストとのディスカッションです。みなさんの質問を受け付けながら、シェアハウスにおける信頼関係構築プロセスを考えます。

まず、ウェル洋光台の福岡達也さんから、「ウェル洋光台はこうやって成り立っているのではないか?」という貴重なお話をしていただきました。例えば・・
・問題が発生したとしても、解決しようとしない、「また話そうね」で終わるようにしている。
・意見がぶつかりあったときに、自然に関係を戻ろうとする力が働くけど、その戻ろうとする力を阻害しないことが重要。
・弱さを受け入れる関係性→弱いところをちゃんと交換し合うことがシェアハウスでの信頼関係構築で重要
・Freeは本当にタダなのか?
・受け取るときに真剣にならなきゃいけない=与えてくれた相手のことを思いやること。与えてくれた相手を思いやれば、自然と「返そうかな」という気になる。こうした繰り返しで信頼関係ができてくるのではないか。
などの話をいただき、納得。もうひと組のゲストの栗山夫妻も、「すごくわかります!」と大きく同意していました。

その上で、出てきた質問がこちら。
Q:お話聞いていて、問題が起きても解決するということにゴールをおかないというのは、皆さんが住んでいらっしゃるシェアハウスに集まっている方々が、もともと機能的な過ごしやすさとか、お金が安く住むよりも、自分を認めてもらえるとか、相手を認めたいとか、その様な動機で入っているということでしょうか?

それに対して、ゲストの回答は以下です。
A:やっぱり暮らしを大切にしたいという人が集まってくるということがあるかなっていうのはあります。手仕事とか(福岡さん)
A:お互いのプライベートとかそういうのを見ているとね、きっちりとした解決が、むしろ合理的ではないと気づくんです。感覚的ですけど。ないまぜにして、溶け合って文化にしていく。その現象の中に自分を置いた方が楽(栗山和基さん)
A:初めから個性を認めて欲しいから住んでいるとかではない。けど、徐々にそっち(無理に、合理的に解決し合わない)の方が合理的になっていく。(茂原奈央美さん)

つまり、現代社会は問題が発生した際に、メリット・デメリットを洗い出し、合理的に解決したりすることも多いと思いますが、シェアハウスでは「解決しない」が実は近道だったりするということですね。

また、栗山和基さんからは、改めて信頼関係がどのように、東京フルハウスで作られているのか?をお話をいただきました。

「初めは消しゴムを拾ってから始まり、徐々に調味料借りて良い?になっていく。そんな風に、迷惑のキャッチボールをしていくことで、少しずつ寄りかかって大丈夫なんだって、意識することが出来る。僕自身、妻が倒れたときに、同じシェアハウスの住人に子供の保育園の迎えを頼んだりした。そんなことがあって、『何かあっても住人がいるから大丈夫』っていう様に、シェアハウス内で信頼できるようになっていったと思う。それは、迷惑かけない様にしようというルールだと、そういうのが育たないと思うんですよね」

つまり、信頼関係構築プロセスを「情報関係構築プロセス」だと置き換えたら、シェアハウスでは、特に弱さを含む情報(=迷惑をかけること)を交換し合うことが、信頼関係構築には重要なのかもしれません。

21:30 終了

クローズしてからも話が絶えず、22:00過ぎまで雑談をしておりました!他のシェアハウスの話を聞くのは非常に面白いですよね。以上が開催レポートです。

<参加者アンケートより>

以下、参加者のアンケートよりご意見・ご感想の一部をご紹介します。

(1)シェアハウスに住んでいますか?もしくは過去にシェアハウスに住んだことはありますか?

(2)本日の勉強会で最も印象に残ったことはどんなことですか?何か気づきや学びはありましたか?具体的にお聞かせください。

・シェアハウスでは互酬性や贈与の規範が働いており、(社会的)交換によって信頼関係が構築されているとの居住者の方のお話しが印象的でした。
・初めて参加させていただき、ありがとうございました。まずは純粋に、シェアハウスの事例紹介として実際に住んでいる方からお話を聞けたのは大変興味深く、面白かったです。東京フルハウスさんは、10人近く住んでいらっしゃるのに水場がひとつ?で上手く使っているということに驚きました。
・コロナ禍で難しいのは、確実な情報が少なく、人々の行動における指針も「完全な規制(罰則があるなど)」というものではなく、「要請」という不確実なもので、だからこそ個々人の認識や考えに任せられることが多く、すれ違いが起きる、というのはそういう部分かなと思います。
・「信頼」「関係性」というキーワードがありましたが、シェハウスにおいては、個人対個人というよりは、シェアハウス内(その時に住んでいるメンバー内)のコミュニティへの信頼関係がそれぞれ構築されていれば、コロナのような突然行動の変化を求められるような事態が起きても、前提としてシェアハウス内で認識がすり合わされているので、大きな問題が起きないのだろうと思いました。あと、「give & “receiving“ 」というお話しもありましたが、各個人が考える、プライベートの線引きを広く持つ、ということも大事なような気がしました。「自分は自分」と線引きをするとシェアハウスコミュニティにも責任が感じられませんが、「シェアハウスコミュニティ=自分」と線引きを広く持つと、信頼が必須ですし、シェアハウス全体の生活が自分ごとになるので、コロナ禍での行動も自分一人でなくシェアハウス全体のことを考えるようになるのかなぁと思いました。(長くてすみません…)
・信頼関係は人との五感の共有(シェア)によって育まれる。その五感のシェアの一つにシェアハウスが入ってきそう。五感の共有をすることで、お互いに分かり合えない、譲れないことがあるとわかる。分かり合えないことは分かり合えないこととすることも共存する上では大事。
・「信頼関係の構築は情報共有プロセス(互いの情報を共有すること)である」というのが今までぼんやりしていた信頼関係が的確に言語化されていると感じました。

(3)本日の勉強会で、疑問に思ったこと、登壇者や研究者に質問したいことがありましたらお聞かせください。

・問題解決のために、サンクションが必要だと思ったことはありますか。
・初回でご説明があったのかもしれませんが、もう少し各シェアハウスの基本情報があると分かりやすいと思いました。(住んでいる人数や部屋数、シェアハウスのコンセプト、シェアハウスの構造(部屋の広さや、共同部分の広さ、数など) 信頼関係の対象が個人というよりは、コミュニティに対して、という場合、信頼関係が構築しやすい環境(要素)の方に何か面白さがあるのでは、と思いました。(その要素として、シェアハウスの特徴や、コンセプト、建物の雰囲気、人々の雰囲気、シェアハウスの使い方、なんとなくあるルール…など。) シェアハウスの住人も出入りがあり、常に一定ではなく流動性があるにも関わらず、そのシェアハウスならではの雰囲気や信頼関係が継続できるには、環境が大きく関係しているように感じました。

(4)意見交換会に参加された方にお伺いします。交流は有意義でしたか?何か気づきや学びはありましたか?具体的にお聞かせください。

・大変面白い機会に参加させていただきありがとうございました。座談形式でありつつ、時折学術的な要素もあったので、話が広がりつつテーマに沿っていたので、コーディネートも素晴らしいなと思いました。
・zoomだから難しいですが、後半はよりインタラクティブな対話になると良いかなと思いました。参加者全員が何かしら発言できる雰囲気ができると良い。
・もうちょっとしっかり参加できる予定でお申し込みさせていただいたのですが、思った以上に部分的な参加になってしまったので申し訳なかったです。すみません。本来はちゃんと最初から最後まで参加するものなのであれですが、少し遅れて参加になってしまったときに「今何をやっているのか」、「その場のルールは何か」がチャット欄などで明確に分かるようになっていると大変助かります!

(5)本イベントの運営に関する感想や改善点などお気づきのことがありましたらお聞かせ下さい。

・大変面白い機会に参加させていただきありがとうございました。座談形式でありつつ、時折学術的な要素もあったので、話が広がりつつテーマに沿っていたので、コーディネートも素晴らしいなと思いました。
・複数のシェアハウスで、それぞれのシェアハウス住人が1週間日記を書き、それを見比べてみると面白そうかなと思いました。それぞれのシェアハウスの特徴が出そうですし、実体験ベースで聞く人もイメージしやすいかなと。何かテーマを決めて、なんとなくそれを意識しながら、それぞれ日記を書いてもらうでもいいし、あえて先にテーマは出さず、見比べるときにそのテーマ視点でそれぞれの事象を考えてみるとか…。
・SBC(滞在型教育)とシェアハウスの共通点と異なる点を考えてみたい。せっかくSBCがSFCにあるからこそ、考えられると思う。

以上です。
改めてご参加いただいた皆さん、誠に有難うございました。

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