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2021年1月23日(土)、みらいのまちをつくる・ラボの研究成果を発表する第2回Oimachi Research Form「Withコロナ・Afterコロナ時代のまちづくりを考える」がオンラインで開催されました。ここではセッション2「コミュニティとテクノロジー」の要旨をレポートします。ラボ代表・飯盛義徳教授のコーディネートのもと、テクノロジーをいかした最先端のまちづくりを行うFujisawaSSTの荒川剛氏、コミュニティづくりの全国的な成功事例である「芝の家」を運営する坂倉恭介氏によるディスカッションに、多くの反響が寄せられました。
*第2回Oimachi Research Form全体のレポートはこちらをご覧ください。

◆Oimachi Research Formセッション2
コミュニティとテクノロジー(総合政策学部 飯盛義徳研究室)

<パネラー>
荒川剛氏/パナソニック株式会社SST推進総括担当、Fujisawa SST(サスティナブル・スマートタウン)マネジメント株式会社 代表取締役社長
坂倉杏介氏/東京都市大学都市生活学部准教授
<コーディネータ>
飯盛義徳/慶應義塾大学総合政策学部教授

(以下敬称略)
飯盛:まずテクノロジーをいかした最先端の街づくりをされているFujisawa SSTの荒川さんから自己紹介とコロナ禍のコミュニティの状況をお聞かせください。
荒川:Fujisawa SSTは、神奈川県藤沢市に位置する住宅中心の複合施設です。すでに2000人超が居住し、パナソニックをはじめとする18の企業と、住民、自治体、大学のコミュニティ醸成で、新たなテクノロジーの社会実装に挑戦しています。コロナ禍で自治会のバーチャル化など新たな手法を模索する一方、社会からのイノベーションに対する期待の高まりを感じています。

飯盛:続いてコミュニティづくりの全国的な成功事例である「芝の家」(東京都港区)を運営されている坂倉さん、お願いします。
坂倉:私の専門はコミュニティマネジメントで、人と人とのつながりを増やすことで、生き心地のよい地域を作っていくことを実践的に研究しています。「芝の家」では緊急事態宣言下で一時活動を停止していましたが、いまはオンラインやオープンエアでの活動が始まっています。やはり人は動いていた方がいい。人と人が出会うことで何かが生まれ、変化にも強いコミュニティが作られていきます。それを支えるのがテクノロジーで、両者は共に進化していくと捉えています。また尾山台(東京都世田谷区)ではさまざまな社会課題をコミュニティという場でテクノロジーを活用して解決していく「リビングラボ」という活動をしており、ここに新しいまちづくりの視座があると考えています。

飯盛:コミュニティとテクノロジーの関係について、荒川さんはどのようにお考えになりますか?
荒川:Fujisawa SSTでは住民のみなさんの協力をいただいて、スマートデバイスを使ったQolの可視化や、自律配送ロボットの実証実験などを行っていますが、みなさん「自分が実験台になって住みやすい街ができるなら喜んで協力する」と言ってくれています。テクノロジーはコミュニティの進化に役立ちますし、テクノロジーの実装にはコミュニティの協力が不可欠で相互作用があります。そして技術を持つ企業、高度な知識を持つ大学、規制緩和に積極的な自治体、受容性の高い住民が一体となった「共創するコミュニティ」を生み出すことが重要で、大学こそがそれぞれを橋渡しできる要なのではないでしょうか。
坂倉:共感します。企業も大学も自治体も一緒にやっていくことは不可欠ですし、コミュニティの運営も問われています。これまで通りの安定した組織運営だけではイノベーションが生まれない。いろんな人と出会えて動いている状態、創発的なコミュニティが重要ではないでしょうか。

飯盛:テクノロジーの実装にはコミュニティの協力が不可欠、創発的なコミュニティが重要というキーワードがでました。そういった協働、創発を引き出すにはプラットフォームという概念が役立ちます。その設計には①空間のデザイン(新しいつながりが次々と生まれるようにする)②コンテンツのデザイン(参加障壁が低くインセンティブが持てる。対等性を担保)③マネジメントのデザイン(資源を持ち寄り、参加者の主体性を引き出す)が重要であり、ここでICTをうまく活用するという発想が必要となります。テクノロジーを使うことで、コミュニティの内と外、コミュニティ同士をつなぐことも可能となってきますし、これからはそういう場づくりができる人材が求められていくといえるでしょう。

◆参加者からの感想・意見(抜粋)
・地方の小都市でも、チャレンジするヒントがありました。
・これからのコミュニティ形成又は活性化にはICTが不可欠ですね!
・コミュニティとテクノロジーの相互作用は大変興味深った。
・大学と企業がコラボしたスマートシティの取組、大変興味深く聞きました。スマートシティというフレーズはよく聞きますが、実際にどのようにしてスマートシティがつくられていくのか、漠然としたイメージしかありませんでした。それが実際どのように形成されているのか知ることができてとても良かったです。
・飯盛先生のまとめコメントが非常に示唆深いものでした
・テクノロジーが進んでもやはりそれを活用する人に対してどのようにはたらきかけるのかが大切なことを再認識しました。
・SSTに関しては、核家族が増加している中でこのようなコミュニティがあると自然と地域とのつながりが生まれる環境を作ることができると感じた。芝の家は以前坂倉先生からお話を聞いたことがあり、外と中の境界が曖昧でよい場だと感じていた。また旧芝の家の跡地を新しいコミュニティの場に活用している点が場所を無駄にしていなく人の繋がりを生まれさせる空間でこのような場が増えていったら地域が活性化されるのではないかと感じた。
・コミュニティとテクノロジーの融合は、少子高齢化が進む地方にこそ必要な取り組みだと感じました。
・疲弊する地方自治体には課題を先進的に解決する財源も乏しく、企業をまじえた産官学連携による先端テクノロジーとコミュニティの融合に大変興味を持ちました。
・多岐にわたる全体的な課題をテクノロジーを駆使してコミュニティで解決するという試みには、興味が増しました。SSTのようなところは(道路が整備してあったり、各戸と双方向に繋がることができる、住民同士がフラットな関係など)社会実験がしやすい場であると思いました。市民のWellBingに繋がるかどうかは未知数だと思いました。
・大井町は「便利な街」として発展してきている様に思いますが やはり「個々が愛する大井町」ではなくて「みんなが愛して動かしてる大井町」がいいなあと思います。役所的には「集会所つくってます」ということかと思いますが『芝の家』の様に「いつも誰か居るところ」からしか町の文化は生まれて来ないだろうなあと感じます。ICTの活用ということで言えば 圧倒的に「広報力」up。素敵なことをたくさんしているのに 知られてない…ところがもったいないので(区としても…ですが…)「へぇ…自分も関わってみたいな!」と思わせられる広報があるといいなと思いました。
・どちらかではなく両方を発展させる必要があるということで、バランスが大事だと思った。
・SSTは大企業の介入でありながら、町のコミュニティと調和しているので、他の地域でのよそもの視点の取り入れの際にも目指していくべき姿なのかなと感じました。今後のこのコミュニティが、介入後に自立して地域の人自身で成長を続けていけるのかという点も気になります。

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